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東北の保育者たちに学び、備える~巨大地震が来る前にできること

元・名古屋短期大学保育科教授まきさんと一緒に考える保育所・幼稚園の震災・防災・地震対策

海抜ゼロメートルの保育施設71園 名古屋市

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海抜ゼロメートルの保育施設71園 名古屋市


南陽第一1

写真は名古屋市港区の南陽第一保育園 海抜は-80cm

2021年1月24日、共同通信社が全国の認可保育所など約3万4500カ所のうち、43%となる約1万4700カ所が津波・洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域に立地していると報道しましたが、津波を伴う地震や洪水で危険な海抜ゼロメートルの施設がどれくらいあるのかを名古屋市で調べてみました。

濃尾平野は全国一の海抜ゼロメートル地帯

濃尾平野は全国一の海抜ゼロメートル地帯を抱えています。
全国の海抜ゼロメートル地帯は、1,184㎢ありますが、その3分の1の402㎢が濃尾平野にあります。愛知県が最大の286㎢、岐阜県61㎢、三重県55㎢となっています。
自治体としては、愛知県津島市、弥富市、愛西市、あま市、海部郡、名古屋市、三重県桑名市、岐阜県海津市などです。

名古屋市内は港区・南区・中川区・熱田区に海抜以下に保育所がある

名古屋市内の保育施設を国土地理院のホームページから調べたところ、海抜ゼロメートル以下の保育所は62園です。幼稚園は、計9園で内訳は港区5園・南区2園・中川区2園です。
各園の海抜は、-80センチメートルからゼロメートルまでで、港区内でみると全保育施設、幼稚園の平均海抜はわずか11センチメートルです。
これは現状の海抜ですが、東日本大震災では最初の揺れで数十センチから120センチメートル地盤が下がりました。海抜ゼロメートルの施設でも地盤が下がることになれば、堤防が決懐した時点で園庭は水没することになり、さらに港区で最大想定津波高は5メートルが襲来することになります。

早く高い場所に避難する

海抜の低い園では、どうすればよいのでしょうか。
南海トラフ地震の場合、津波の到達時間は1時間半以上と想定されていますが、震度6強から7の揺れ で堤防が崩れる恐れがあります。
そうすると津波が到達する前に園舎周辺が水に浸かる恐れもあります。
東北の経験は、できる限り早く垂直に避難するということを教えてくれました。
小さな子どもを連れての避難は500メートルが限度と思って避難先を確保してください。

港保育園1
名古屋市立港保育園

港保育園2
屋上が避難場所に

写真の園は名古屋市の港保育園(海抜50センチメートル)ですが、改築時に屋上に避難場所を開設しました。
写真左側の階段で屋上に避難できます。

改築はお金もかかり大変です。
小学校などに避難する場合は、人数分のおんぶ紐や避難車を用意してください。
30センチメートルの津波で子どもは流されますし、大人でも子どもを抱えての避難は困難です。

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災害警戒区域立地の保育所43% 

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災害警戒区域立地の保育所43% 「移転なし」が千市区町村
共同通信 2021年1月24日(日) 21:14配信


警戒区域立地保育所

浸水区域、警戒区域に立地している保育施設の割合

共同通信社は、2021年1月24日、以下のような記事を配信しました。

 全国の認可保育所など約3万4500カ所のうち、43%となる約1万4700カ所が津波・洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域に立地していることが24日、共同通信の自治体アンケートで分かった。一方、これらの地域に立地する保育施設があるものの、東日本大震災以降、防災のために移転した施設はないと答えた自治体は約千市区町村だった。
 保育所の全国的な立地状況が明らかになるのは初めて。移転困難な要因として用地取得や財政面の課題を挙げる自治体が目立った。各地で甚大な自然災害が頻発し、南海トラフや首都直下などの巨大地震が予想される中、子どもの命を守る環境整備が急務となる。

だんごむしのポーズの意味を考えよう!【保育所・幼稚園で地震が起こったら】

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だんごむしのポーズの意味を考えよう!

IMG_2766.jpg

保育所や小学校の地震の避難訓練では、「地震です」の放送と共に子どもたちはだんごむしのポーズと呼ばれている頭を抱え、身体を丸めてしゃがむポーズを取ります。

大きな地震の際は、天井、棚の落下物から大事な頭を守る必要があるためです。
机の下に潜りこむ場合も身体を丸めると入りやすくなります。

ちいさな子どもたちは、理屈よりも繰り返して行う体験を通して自分自身を守ることを学びますので、しっかり訓練されている園では、指示と共に子どもたちは素早くだんごむしのポーズを取ります。


机・テーブルが無いときは?

だんごむしのポーズ


だんごむしのポーズを取る理由は、頭を守り、机の下などに潜り込むのに有効です。

それでは机などが無い場所ではどうすればよいでしょうか。
机を片付けて室内で遊んでいる時、園庭で遊んでいる時、お散歩中はどうすればよいのでしょうか。

落下物から身体を守る場合、頭と共に背中を守ることが大事です。
足にけがをしても、引きずりながら移動できますが、背中を打つと致命傷を負うことになりますし、動けなくなります。

ですから外で大きな地震に遭うと大人たちはカバンを頭の上に覆い、逃げます。
その場で頭を抱えてしゃがむ、布団があれば布団をかぶるなどが有効だと思います。


まずは危険な物は棚の上の置かないことから


家具を固定する


東日本大震災の時に保育所の室内では、棚に置いただけのラジカセ、固定していない棚などは落ちたり倒れたりしましたが、業者が取り付けた物はほぼ大丈夫でした。

古い園の場合は、鎖でぶら下げた蛍光灯は激しく揺れましたし、固定していないピアノも動いた園もありました。


防災頭巾の扱い

防災頭巾


大きな揺れが収まると次は園庭に避難すると思います。
それから指定避難所の学校などに避難しますので、津波想定地区の場合は速やかに動くことが求められます。

避難経路に沿った民家の屋根から余震で瓦が落ちてくるかもしれませんので、すぐにかぶることができるように準備してください。

子どもの各自の椅子の背もたれが防災頭巾になる物もありますし、クラス担任が袋に入れてある頭巾を配る園もあります。
いずれにしても、外遊びの時などは余震が続く中、ひとりひとりが取りに戻るよりも、保育士が袋を取り出し、園庭で配るほうが早く避難できます。

火事の時は園舎(火元)から離れることが大事ですが、津波が来ない地域(想定外も考慮します)で耐震補強してある園舎であれば園内のホールに集まることもよいと思います。

「うちの園では昔からこの方法でやってきた」ではなく、何のための行動なのか、素早く行動するためにはどのような方法が良いのか考えることが大事です。

園の防災についての声

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園の防災についての声

ひまわり小
写真は大川小学校で犠牲となった児童のお母さんたちが咲かせた種を譲り受け咲かせたひまわり

ちいさいなかま9月号は、園の防災特集ですが、読者のみなさんの興味深い声がたくさん紹介されていました。
大阪の保護者(母親)さん、「一番気になっているのは、保護者との連絡体制の確保を、園が真剣にしていないことです…過去に被災した保育園の知見を使ってどんどん改善してほしい」
大阪の保護者(父親)さん、「避難訓練などを行っているのと行わないのではまったく違うので、やはり訓練は本番さながらを想定して行ってほしい」
いずれも大事な指摘だと思います。
一方で、岐阜の保育者さんは、「訓練にあたっての準備を行ってしまう」とのことです。事前に上着や靴、ベビーカーを準備して訓練の開始を待っているとのことです。
また、京都の職員さんは、「毎月避難訓練をしていますが、保育士と子どもたちのみ、私のいる給食室や非正規雇用職員は関係なし」とのこと。避難の必要な大規模災害では、大人は一人でも多いほうが良いことは少し考えればわかることです。調理員さんがどのクラスのサポートにはいるか決めている園もあります。

緊張感の無い避難訓練、書類だけで訓練をやったことにしてしまうことのないようにしなければいけません。

ちいさいなかま2020年9月号 「どうすればいい? 子どもと共に園の防災・避難計画」解説版

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ちいさいなかま2020年9月号
「どうすればいい? 子どもと共に園の防災・避難計画」解説版


ちいさいなかま9月号で紹介された原稿に加筆、修正し、解説版としました。

ちいさいなかま1

ちいさいなかま2

保育力が試される
災害時の対応は、東日本大震災のように午睡中であったり、熊本地震のように新学期早々かもしれません。
あらゆる事態を想定しますが、最終的にはその場の状況に合わせて保育者一人ひとりが最善の行動を取る必要があります。
防災対策の取り組みは、子どもたち、保育者の安全を最優先しながら対応しますので、避難訓練を含めてしっかり防災対策に取り組めば、保育者としての力量もつき、チームワークも強固となります。保護者との信頼関係も深まります。

耐震補強や危険箇所の整備はできているか?
地震対策の第一は、園舎の耐震補強とブロック塀などの危険物の除去、棚やロッカーの固定と棚の上や中にある物の落下防止です。南海トラフ地震では、阪神・淡路大震災と同じ震度7が想定されている地域が多数ありますので震災対応の前提となる課題です。

防災マニュアルの作成と見直しはできているか?
保育所保育指針では、災害対応のマニュアルの作成を義務付けています。場所が変われば避難経路も違いますので、マニュアルは施設単位で作成する必要があります。
東日本大震災で74名の子どもが犠牲となった大川小学校の裁判では、「内容の不備を是正していない」と指摘されていますので、「マニュアルがあるから大丈夫」ではなく、新たに発生した災害から学び、常に見直す必要があります。

職員・保護者に周知されているか?
宮城県石巻市の私立日和幼稚園では、東日本大震災で5名の園児が津波の犠牲となり、遺族が園に対して損害賠償請求を起こしました。仙台地方裁判所は園側が危機管理マニュアルを職員に周知していなかったことの責任を認めています。
大川小学校の裁判では、非常時の対応について保護者に周知させていなかったことの責任が問われています。
職員と防災対策を話し合い、保護者に対しては説明の機会を設けるべきです。

子どもと共に職員、保護者の命を守る
常に子どもたちと共に保育者の命も守るという意識を持つことが大事です。
保育所保育指針解説では、保護者の送迎訓練を行うことを求めていますが、津波時の対応などでは危険な場合があります。
東日本大震災では、かなりの子どもが保護者に引き渡した後で津波の犠牲となっていますし、迎えに来ようとした保護者も犠牲となっています。
津波想定区域の保育施設では、安易な引き渡しを行わず、保護者も自分の安全を確保した後で避難先に迎えに来る規程にすべきです。

子どもの命を守る力を育てる
名古屋市の熱田福祉会では、危機管理マニュアルの中で「子どもたち自身が年齢に合わせて自らの身を守る力を育てる」ことを目標にしています。
犠牲者が千人ほど出た釜石市では、子どもの防災教育に取り組んだ結果、学齢期の子どもの犠牲は学校にいなかった五名のみでした。幼児期から避難訓練等を通して自らの命を守る取り組みを続ければ、防災意識のある子どもたちが大人になり、次の世代にも受け継がれます。

あらゆる状況を想定した対応を
 仙台高裁は、大川小学校の裁判でハザードマップについて、「予想浸水区域の外に避難すれば安全であることを意味するものではない」と指摘しています。
 ハザードマップは、過去の災害等を元に作成していますので、次に発生する災害はそれ以上の被害をもたらすかもしれません。東日本大震災やこの間の台風被害のように従来の常識を超えた規模のものかもしれません。園長不在の時に発生するかもしれません。避難道路が液状化により通れないかもしれません。
 まず園庭に避難し全員そろうまで待機し、それから列を作り避難所に避難する、この通りこなせば間に合わない地域もあります。東北では、年長児を二名の職員が先に避難させ、一名は引き返して未満児の避難を手伝い、何とか全員の避難を終えた園もあります。
 宮城県石巻市の私立なかよし保育園では、大きな揺れの後で園庭に避難しようとしましたが、園庭に地割れが走り、地面が開いたり閉じたりしていました。当時の大橋巳津子園長は、避難予定先は近くの小学校でしたが、耐震補強済みの保育園二階の子育て支援センターに避難するように指示を出しました。その後、一階の床上まで浸水し、最後の子どもの保護者が迎えに来たのは丸二日後で、ボートに乗って帰って行きました。
津波時の避難では、車での移動は渋滞に巻き込まれ危険です。できる限り園から近い場所で垂直に避難できる場所を確保する必要があります。おぶい紐は全乳児分を用意し、避難車も三歳未満児が乗れる台数は確保してあるでしょうか。三〇センチの津波で子どもは流されますし、子どもをおぶっていては保育者も流されます。
公立園では、市役所と連絡が取れなかったですし、あらゆる事態を想定する必要があります。

最善を尽くす
福島県いわき市の保育士さんは、死ぬかと思われる大きな揺れが数分続く間に、今日は園長も主任も不在であること、職員の中で自分が一番の経験者であること、揺れが収まった時はクラスの子どもに避難指示を出し、その後、各クラスを回り園庭への避難を指示することを考え、少し揺れが収まると想定通りの行動をされました。
万全の準備をしたうえで、その状況下で最善を尽くす必要があります。

感染症対策も必要
新型コロナウイルス問題では、災害の発生と重なった場合の避難所の感染症対策が課題となりましたが、津波や洪水の場合は園庭が汚水をかぶり感染症が発生します。汚染された園庭を裸足で歩くと感染症にかかるリスクがありますので、園庭の土を入れ替える必要があります。
ヘドロは粘土をすりつぶしたような細かな粒子の状態でこびりつき、乾くと粉となって舞いますのでマスクは手放せません。町中が臭くなり、ハエも大量発生します。手洗いや消毒も欠かせません。

実践的な避難訓練を行う
保育所は毎月1回以上の避難訓練を義務付けています。幼稚園は、消防法の適用のため年2回以上としか規定されていませんが、この回数では不十分です。認可外保育施設を含めて月1回以上の避難訓練を実施すべきです。
愛知県内のある園の避難訓練の様子を紹介します。
訓練開始の放送を入れる時に、所長は小石を入れた空き缶を鳴らしながら緊迫感を持って地震発生を伝えます。子どもたちは、廊下にいる子どもたちも素早くだんごむしのポーズをとります。
以後は、停電を想定してハンドマイクからの指示に変わります。全クラスに指示が伝わるように園庭から園舎に向かっての指示です。担任はメガホンで園児の状況を園長に伝えます。毎回、体調不良やけがをした子どもが出ること、階段や廊下で通行不能になる場所を設定していますので、保育士は状況に応じて行動します。
大人の真剣さは子どもたちにも伝わります。この園では、毎回、訓練後の反省会を開いていますし、保護者参加の訓練も行っています。

地域との連携を取る
東日本大震災では、地震の発生と共に近くの事業所の社員が園庭に駆けつけ、避難を手伝ってくれました。津波から避難する場合は一刻を争いますし、高い場所への避難です。大人が多ければそれだけ早く避難できます。
なかよし保育園は指定避難所ではありませんでしたが、近くの住民の方の避難を受け入れました。日頃から、地域との関係作りをしておくことが必要です。

公立保育所を守る取り組み
公立園は私立園と比較すると相対的に規模が小さく、通園距離も近く、経験を積んだ保育者も多くいますので災害時の対応で利点があります。
また、公務員保育者は発災後、避難所等で住民の支援に当たりますので、子どものいる被災家庭を支える役割も担います。
災害が避けて通れない日本だからこそ公立の保育施設を守るため、安易な民営化を許さない取り組みが重要です。
また、東日本大震災や新型コロナウイルス対策でも明らかになりましたが、私立園も含めた非常時にも対応できるだけの職員配置基準の改善と正職員化、そしてクラスの小規模化とゆとりのある保育空間の保障が求められます。

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